日本文化の特質
――力としての文化 第二話
岸田國士

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)御親《みおや》と

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(例)[#7字下げ]一[#「一」は中見出し]
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[#7字下げ]一[#「一」は中見出し]

「文化」は国土と歴史との所産であります。言ひ換へれば、民族の血と運命とが創りあげる生存のすがたであります。民族とはこゝでは狭い意味の人種的差別を云々せず、精神的に結合した政治的統一体を指すこととし、やがては、国民の名に於て全く等質の文化圏に入るべき複合民族をも意味するものと考へたいのです。
 ところで、日本の「文化」は、今日まで、いはゆる「大和民族」たるわれわれの祖先が、允文允武にまします歴代の天皇を御親《みおや》とし奉り、世界を「家」となす遠大な理想をかゝげ、赤子たるの光栄と本分とを忠誠の臣節に籠めて、ひたすら国運の発展と「美《うま》しき」国風《くにぶり》の充実に尽して来た、その結実なのであります。
 時に暗雲が朝威を覆ひ、民心転た悄然たる時もありましたが、乱れゝば光り現れ、犯されゝば力湧き起る神の国
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