それぞれの力を一点に集めるといふ協力態勢が十分にとれてゐないこと。もつと詳しくいへば、教育家と宗教家と、医師と技術家とが相互にその能力を提供しつゝ、その地方に於る文化的欲求を充して行くといふやうな心構へと方法とが、まだ研究されてゐないこと。甚だしきは図書館、博物館等が組織から除外されてゐるといふが如き例を度々見かける。
[#「地方文化機構図」のキャプション付きの図(fig44674_01.png)入る]
以上のやうな点について、今後あらゆる文化運動が正しい方向に向けられて行かねばならぬけれども、特にその際、各分野の人たちが、単に自分たちのためにこの運動を起すといふやうなつもりであつてはならぬことは勿論、更に自分たちの専門分野のためをはかることに急であつて、他の分野のことには無関心であり、あるひは他の分野を軽視して憚らないといふやうな事態が起つたならば、地方文化建設の目的から遥かに遠い結果を招く惧れがあるのである。
その意味でわれわれは組織の上から先づこの弊を除き、更に人的要素に於ても十分この点を警戒しなければならぬと考へる。地方文化機構の整備強化を目標とする団体組織については、現在
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