とも、それは承知しないの。前の男は、かうなつたのは自分が悪いんだから、過ぎ去つたことは過ぎ去つたこととして、どうしても一緒に、これから二人で生活の建て直しをしようつて、きかないの。後の男は後の男で、自分の方にその権利があるつて譲らないから、あたしは、もう、はつきり自分の考へが云へなくなつてしまふぢやないの。一方はまだ二十五で、一方はもう……たしか三十だわ。二人を並べると、あたしの気持は、十分、前の男の方に傾いてゐることはわかつてるの。
愛子 若い方ね?
悦子 ええ……。でも、さういふ気持を別にしても、その方が正しいんぢやないか知ら……?
一寿 (自分の珈琲を飲み干し)おい、折角のが冷めちまふぢやないか。
愛子 (黙つて、卓子に近づき、珈琲茶碗を取り上げる)姉さん、それだけの話?
一寿 なにをお前たちは、こそこそ話してるんだ?
愛子 秘密の話よ。パパは聞かなくつていいの。(姉の方に近づく)
悦子 興味ない?
愛子 そこまでは事件の筋道ね。スキヤンダルになるかならないかは、姉さんの態度ひとつだわ。
悦子 どうすればいいの?
愛子 あたしならつていふ返事はできるけど、姉さ
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