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話は違ふが、近頃また「西洋嫌ひ」を看板に、世間のオツチヨコチヨイを手なづけようとしてゐる慷慨家をぼつぼつ見かけるが、これは慥かに時勢に投じたやり口である。
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西洋からでも帰つて来て、「いや西洋はつまらんです。なつちやをらんです。やつぱり日本に限りますな。日本人は大したもんです。外国の土を踏んで、初めて日本の有難さがわかりました」――なんと、景気のいい挨拶ではないか。
いづくんぞ知らん、この男、西洋に行つて神経衰弱になつた男ならんとは。
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自分でダンスをやらない人間は、その理由次第では、頼もしい人間に違ひない。
しかし、人がダンスをやるからと云つて、それをかれこれ云ふ人間は、どんな理由があるにもせよ、頼もしからざる人間だ。
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サイノロジストは概して進歩主義者である。
人前を憚つて細君に冷やかな態度を示す男は、自動車に轢かれて「失敬、失敬」と叫ぶ男ほど滑稽である。
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婦人の貞操観念は必ずしも変化したとはいへない。変化したのは、ただ、常に貞操と関係のある髪の形だけだ。(一九二五、五)
底本:「岸田國士全集20」岩波書店
1990(平成2)年3月8日発行
底本の親本:「時・処・人」人文書院
1936(昭和11)年11月15日発行
初出:「文芸時代 第三巻第五号」
1926(大正15)年5月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年10月6日作成
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