野に於ても、おのおのゝためであり、仕事そのものゝためでもあるといふことを私はこゝで繰返して主張したい。
 殊に人の少い新劇の畑で、めいめいがその才能と学識と経験とを持ち寄らぬといふ法はなく、そのためには、劇団行動のやうな比較的浮動性の強い組織のなかでよりも、学校とか研究所とかいふ組織を中心としての方が、各人の専門知識を独自の立場で自由に活かしつゝ、尚一定の理想に向つて協力の実を挙げ得る可能性が多いといふことを私は信じて疑はぬものである。
 最後に、演劇と映画の問題に関して、私はかねがね、将来の日本映画は、必ず新劇的教養乃至訓練の支配を受けるべきものだと確信し、新劇にたづさはるものは、是非とも映画に片足を踏み入れ、映画を志すものは、絶対に新劇の門を潜るより外道はないといふ建前のもとに、この両者を密接な関係に於て教育する方針であることを伝へておかう。



底本:「岸田國士全集23」岩波書店
   1990(平成2)年12月7日発行
底本の親本:「東京朝日新聞」
   1938(昭和13)年2月6〜9日
初出:「東京朝日新聞」
   1938(昭和13)年2月6〜9日
※初出時のタイトルは「現下の思想統制」「新協劇団の宣言」「「文学座」の内容」「演劇アカデミイ」であり、それぞれに「新劇の行くべき途」の副題が付けられていた。
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年11月12日作成
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