い。それならそれでいい。さういふ素質の、さういふ柄の俳優が先づ出て欲しい。
 われわれが若し、俳優養成といふ責任ある仕事を始めるとすると、どうしても俳優志望者個々の素質に厳密な注意を払はなければならない。私は、それについて、近く私見を発表するつもりであるが、ここで、はつきり云つておきたいことは、「人並み以上」の頭をもつてゐなければ、「俳優並み」の俳優にすらなり得ないといふことである。頭といふのは学問を指すのではない。知力である。悟性である。それから、感受性である。
 そこで、私は、更めて読者諸君に訴へる――わが新劇のために、よき俳優を見出すチャンスを与へて頂きたい。



底本:「岸田國士全集20」岩波書店
   1990(平成2)年3月8日発行
底本の親本:「現代演劇論」白水社
   1936(昭和11)年11月20日発行
初出:「女性 第十巻第六号」
   1926(大正15)年12月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2006年2月19日作成
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