一翼として、各地に擡頭しつゝある新文化団体は、正にこの方向にむかつて発足したものと私どもは確信し、また期待してゐるのである。
前に述べたやうに、緊迫した情勢に即応する文化活動の目標を「生活力の強化」におくとして、その実践の具体的方法は、次の三点に集約できると思ふ。
一、生活の協同化
二、生活の単純化
三、生活の明朗化
右はいづれも、能率、健康、趣味の立場から、云ひかへれば、道徳、科学、芸術の総力を動員して、綜合的にこれを押し進めなければならぬのであつて個々の専門的発意は、常に、全体的企画の中に融け込んで初めて効果を挙げ得ることを銘記すべきである。
文化部門のかやうな「生活」への働きかけは、独自の専門的立場から必要な知識を提供することばかりでなく、最も鋭敏なる文化的感覚の発揮によるものであつて、生活の理想は如何なる国土の上に築かるべきかを夢み得る独特な魂を必要とするのである。
この「夢」が、今後一切の文化活動を通じて、国民を起ち上らせ、これを強力な結合へと導き得るに違ひない。
大政翼賛運動は、元来、政治、経済、文化などゝ別々にわけて行はるべきものではないのであるが、私たちは、文化の領域といふよりも寧ろ文化的感覚がどうかすると政治や経済の面に於て軽視されすぎてゐる実状に鑑み、この運動に、各職域のもつ普遍的な精神能力を有効に附加することから先づ始めなければならぬのである。(昭和十六年八月)
底本:「岸田國士全集25」岩波書店
1991(平成3)年8月8日発行
底本の親本:「生活と文化」青山出版社
1941(昭和16)年12月20日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年3月1日作成
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