方でも、食卓の儀礼でも、衣裳の着こなしでも、夫婦間の日常会話でも、子供の遊び方でも、カフェエの雑沓でも、それこそなんでもかんでもが、珍しくもあり、知りたくもあり、想像を確めたいことだらけなのである。なぜかといふと、今日の日本人の大部分が、幾分づつそれに近づかうとして、しかも、どこかぴつたりしないものを感じ、ああでもないかうでもないと、ひそかに苦労をしてゐる時代だからであるし、また、おれは日本人だから日本風を好むと云ひ切れる人間でさへ、やつぱり、卑俗な意味で、西洋の女の嬌態には曖昧な視線を注ぐといふのが、僕の偽らぬ観察である。
 これだけ云へば、もう沢山であらう。語学の勉強にトオキイを見出したといふ学生をも、これに加へてよければ加へることにしよう。(一九三六・七)



底本:「岸田國士全集23」岩波書店
   1990(平成2)年12月7日発行
底本の親本:「時・処・人」人文書院
   1936(昭和11)年11月15日
初出:「とつぷ 七月号」
   1936(昭和11)年7月1日
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2005年3月18日作成
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