地方としての理想に還元し、郷土を中心とする一つの将来への希望に移して行かねばなりません。即ち郷土の理想化といふことが新日本を築く一つの基礎になることを明瞭りさせなければなりません。
文化は元来特定の指導者によつて建設されるものでなく、国民の自主的創造力が特に重要であります。従つて地方文化運動もその地方における特殊の性格が一つの力となり、新しい方向に結び付いて行く、これが文化運動の一項目だと思ひます。新しい郷土の理想化は、一面において夢であり、同時に現実に繋がるものであります。この夢は如何に美しく大きく描かれても描きすぎることはありません。そして現実と夢を結び付ける力は、私は文化部門の職域となる人々にあると思ひます。即ち最も精神的な問題に対し深い関心と見識を持たれる人々によつて地方生活の問題が十分に検討され、建設的意見が出て来ねばならぬと思ひます。
地方文化運動の具体的目標は、私は所謂「生活力の強化」の一点に帰著すると思ひます。生活力の強化が生活文化水準の向上に一致するといふ確信をもつて進むべきであります。文化水準の向上はともすると経済的にばかり考へられてゐたのでありますが、これは
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