日本の所謂近代文化の領域に於て最も欠けてゐる部分なのであります。
 第一は文化部門の政治への教育、即ち政治の文化性であります。これは今日までたゞ批判として述べられてゐましたが、最早批判の時代ではありません。少くもわれわれ国民全体が大政を翼賛し奉るといふ意味に於て、日本の政治をよくするも悪くするも国民の責任であります。かゝる意味で文化部門の者がそれぞれその智嚢を傾けて政治への教育をすることが必要であると考へます。
 第二には、狭義の文化部門が各職能人の専門的孤立に陥らず、十分の連絡交流を図ることであります。
 第三はこの文化部門が国民生活に十分に根を下すやうなものにならねばならぬことでありまして、今日までは動もすれば文化が生活から遊離し、文化部門が国民大衆と無縁のものであるかの如き印象を与へてゐたことを、十分反省せねばならぬと思ひます。かくしてこそ真の意味での大衆の文化部門における向上が期せられることを確信するのであります。
 文化各専門部門が相互に連絡交流し、しかも一般国民生活に根を下すこと、この二つが第一の文化の政治性を取戻すことかと思ひます。

 以上は全国的文化運動の課題でありま
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