とりのないものであるかを考へると、それらの人々の日常生活がおよそ察せられるやうに思ふ。
 すなはちさういふ人々に限つてものゝ価値判断があやふやで、精神的にまつたく空虚な、従つて、ほかに心を愉しませるすべのない生活を送つてゐるに違ひないのである。
 時局がら不謹慎だといふ見方は別として、私は、偶然、その劇場に集つた人々だけを責める気はしない。現代日本人の大部分が、いま、さういふ傾向をたどりつつあるのであつて、私はむしろ、これについて教育家と為政者の猛省を促したいと思ふものである。



底本:「岸田國士全集25」岩波書店
   1991(平成3)年8月8日発行
底本の親本:「朝日新聞」
   1941(昭和16)年2月13日
初出:「朝日新聞」
   1941(昭和16)年2月13日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年1月20日作成
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