たが、急にそんな講義はできない。まあ、僕にできることをやらう」
三時間目には、生徒はたつた二人しか出席しなかつた。
試験の日には、生徒は殆どみな出席した。
「君達は、試験の時ばかり来て普段はまるで顔を見せないね。それでよく、どの学科でも試験が受けられるね」
すると、一人のよくない生徒が応じた。
「しかし、みんなが休むのは先生の講義だけですよ」
この話は厭な話である。しかし、これを私に話した学生は、この春休みに英語の小説を一冊、辞引を引きながら読む人だと云つてゐた。困つた話である。
底本:「岸田國士全集24」岩波書店
1991(平成3)年3月8日発行
底本の親本:「文学界 第七巻第四号」
1940(昭和15)年4月1日発行
初出:「文学界 第七巻第四号」
1940(昭和15)年4月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年1月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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