クの中へ首だけ出して匿れてゐたのを見つけたんであります。便服ですし、はじめどうしてもほんとのことを云はなかつたですが、しまひに自分で匿した銃の在りかを教へました。それと首に軍隊手牒をぶら下げてゐましたから、もう間違ひはありません」
それから、一人の将校が、
「敵の逃げる時はきつと住民も一緒に逃げるもんですから、後ろから射撃するのにとても厄介なんです。住民を殺すまいと思ふと、つい敵を射ち損ひますから……」
「だから、かういふ部落で宣撫をする時は、日本軍が攻めて来ても、決して支那兵と一緒に逃げてはいかんと云ひふくめておきます。逃げる奴は命の惜しくない奴だ」
隊長はさう附け加へた。
「今日の戦果はどうでしたか?」
私は訊ねた。
「えゝ、まあ、大体……」
と、隊長は、敵を追ひ払つただけでは満足しない様子であつた。
喬野部落にさしかゝると、一人の老婆がおいおい泣いてゐて、その傍らに二三人の男女が声をひそめて話し合つてゐる。通訳がわけを訊くと、その老婆の家が今焼けてゐるのだが、それは日本兵のやつたことか支那兵のやつたことかわからぬと云ふのであつた。
「日本軍は決してそんなことはしない。少くとも今こゝにゐる日本の兵隊は、罪のない住民の家を焼き払ふやうなことはないのだ。多分、支那軍が弾薬庫にでも使つてゐて、逃げる時に火をつけて行つたのだらう」
隊長のその言葉は老婆の耳へははひらない。手ばなしで、それこそ子供のやうに、涙を流して泣き喚くばかりである。
「こつちの砲弾はこのへんに落ちるわけはないし、いつたいどこの家だ?」
住民の宣撫といふことに心をくだいてゐる隊長は、かういふ訴へを聞き流しにできぬとみえ、その燃えつゝある家の前に立ち寄つて、中をあらためさせた。
「敵の大隊本部にでもなつてゐたのかな」
さういふ目的に使用された家屋は、将来のために焼きすてろといふ秘密命令でもでゝゐるのか?
骨組だけが残つて、内部はまつたく形をとゞめぬくらゐ丸焼けである。ポンとなにかの破裂する音がした。
「危いぞ。気をつけろ」
誰かゞ注意した。中にはひつて行つた兵隊が靴を真つ黒にして出て来る。臭い臭いといふ顔をし、なんにもないと首を振つてみせた。
「それぢや、災難として、いくらか婆さんに見舞をやつとけ」
と、隊長は、主計に命じてゐた。
本部の休憩所がきまり、昼食の支度である。
「あな
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