たが、私の見るところ、どうも日本人の世話の焼きかたには、一種特別な「型」があり、こつちのまともな気持が向うに通じないやうなもどかしさがありはせぬか?
 こつちで金を出して呼び寄せた留学生だから、日本への好感を十分に植ゑつけ、こつちの思ひどほりに教育して帰したいのは人情である。不自由のないやうに万事気をつけてやる親切は、これこそ、日本がサーヴイスの国と呼ばれる所以だが、お客様をもてなすために、自分たちが不断やつてゐないやうなことを努力してやらうとすることに無理があるのではないかと思ふ。
 国際学友会の意義ある使命と、この事業にたづさはる有能な職員諸氏の熱誠を信じるだけに、これら外国留学生たちが何故に、自分らは、日本の青年たちとこんなに違つた、理想的ではあるが、周囲の事情とかけ離れた形式と雰囲気の生活をしなければならないかを疑はしめないやうにしたいものである。



底本:「岸田國士全集24」岩波書店
   1991(平成3)年3月8日発行
底本の親本:「文学界 第五巻第十号」
   1938(昭和13)年10月1日発行
初出:「文学界 第五巻第十号」
   1938(昭和13)年10月1
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