るものであると、私は信ずる。それゆゑに、女の服従は男の決意を固めさせ、行為の責任を自覚せしめる力となるのである。
私は、命ずれば音の響きに応ずるやうな「諾」の返事ほど、夫の心に妻を凜々しく感じさせるものはないと思ふ。まことに、日本の家の深々とした重みである。
以上で、私たち、即ち私と亡妻との合作になる女性訓を終ることにする。
家内は幽明を隔てた界から、この原稿を嘗て屡※[#二の字点、1−2−22]さうしたやうに、私に読み返してみせるであらう。
こゝをかうしたらといふ意見も出すであらう。私は笑つて、そのまゝでよろしいと答へる。彼女は従ふであらう。
あゝ、しかし、彼女の眼に涙が溜つてゐはせぬか。
私は、堪へ難い彼女への憐憫と作家としての良心にかけて、この一文を敢へて発表する。
読者は、どうぞ、私の真意を汲んで、素直にこの愚かな告白を聴いていたゞきたい。
底本:「岸田國士全集26」岩波書店
1991(平成3)年10月8日発行
底本の親本:「婦人公論 第二十八年新年号、二月号」
1943(昭和18)年1月1日、2月1日発行
初出:「婦人公論 第二十八年新年号、二月号」
1943(昭和18)年1月1日、2月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年3月1日作成
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