めて厳密な程度が、要求されるのでありまして、「殆ど正確な」といふことが、既に排斥されなければなりません。
 さういふ研究は、これまでの「新劇」に於て、全く閑却されてゐました。「おや、あなたでしたか?」といふ白がその「言ひ方」で二十通り以上の「意味」を現はすといふことなど、考へてみた俳優は一人もなかつたと云つてよろしい。
 これからの見物は、さういふところを見逃がしてはなりません。「芝居」が面白かつたといふ印象のうちに、さういふ批判が含まれてゐなければ、現代の演劇は進歩しないことを私は信じます。



底本:「岸田國士全集22」岩波書店
   1990(平成2)年10月8日発行
底本の親本:「婦人之友 第二十八巻第三号」
   1934(昭和9)年3月1日発行
初出:「婦人之友 第二十八巻第三号」
   1934(昭和9)年3月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年9月5日作成
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