顔をぢつとみて、降りようとしない。
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微々 ぢや、さよなら、おやすみなさい。
更子 いゝわ、もう一度、送つてつてあげるわ。
微々 僕、少し、喉が渇いたんですよ。
更子 ぢや、その辺で、何か飲みませう……。(運転手に、何か囁く)
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車はまた動き出す。
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○あるカフエーの前。
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二人は車から降りる。
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○カフエーの中。一隅のボツクスに陣取る。女給が来る。
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更子 なに?
微々 プレンソーダ。
更子 ぢや、二つ。
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女給が、ソーダ水を持つて来る。二人は、黙つて、ストロウを唇にはさむ。時々、上眼使ひに、お互の顔を見合つてゐるが、遂に視線が合ふ。
微笑。
コツプのソーダ水がだん/\減る。
二人は、飲み終ると、同時に、ストロウを咬いたまゝ、顔をあげる。そして、眼と眼とで、深い微笑を交しながら、次第にストロウの先を近づけ合ふ。それが
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