ば、個人々々が、時の大勢に就かうとする保身の本能にもとづき、また「人が許しさへすれば、どんなことでもしでかす」群衆心理の現れとも考へられるところに、人間探求の緒があるやうに思ふ。
 要するに、精神の矜りを失つた人間の、常に「一番楽な道を通らう」とする、怠惰で、かつ、慾深い性向の顕著な一例であるに過ぎぬ。
 類ひなく美しいわが国体の尊崇は、われわれの現在生きつゝある日本の、世界に冠絶する理想のすがたを夢み、その理想達成のために戦はんとするひたぶるな意志によつて示されなければならぬ。
 日本の理想顕現を阻む敵は、外に米英ありとすれば、内に「卑俗な精神」ありと、敢て私は云ひたいのである。



底本:「岸田國士全集26」岩波書店
   1991(平成3)年10月8日発行
底本の親本:「文学界 第十巻第一〜三号」
   1943(昭和18)年1月1日〜3月1日発行
初出:「文学界 第十巻第一〜三号」
   1943(昭和18)年1月1日〜3月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年3月1日作成
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