、一番早くわかつてゐる人たちであらうと思ひますが、それぞれの部門をお互に委せる、その代り自分のところでは、かういふことをやると、はつきりと役割を受取つて、それに責任をもつてやることが、今一番大事ぢやないかと思ひます。それさへあれば、もう官庁や何かゝら何をやれ誰をやれと指図を受けなくても、ちやんと自分でできるところに、日本人の非常に立派なところがあると思ふのです。それをお互に譲り合つてゐることや、或は協力することばかりに囚はれて、一つのことを誰もやれ彼もやれといふ形に流れて行くことは、却つて協力の実践を阻害することになるんです。われわれは一体さういふ習慣がないからまごつくんですが、今の自分としては、だんだんにこれは相談をしてやらねばならん、さうして次の時代には、どうかしてさういふ訓練を受けた人たちが、われわれの時代を継ぐやうにして行かねばならんと思ひます。(昭和十五年十二月)



底本:「岸田國士全集25」岩波書店
   1991(平成3)年8月8日発行
底本の親本:「生活と文化」青山出版社
   1941(昭和16)年12月20日
初出:「中央公論 第五十五年第十二号」
   1940(昭和15)年12月1日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年1月20日作成
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