いふ枢軸国の人々に対する新しい日本認識の基礎を観光事業に携つて居る方々が与へて下されば結構だと思ひます。具体的な一例と致しましては、今まで大体英語国民を中心として色々文書等が刊行されて居る。英語国民を対象として居るといふことは必ずしも英語で書かれて居るといふことだけではなかつたと思ふ。
 詰り英語国民の心理なり英語国民の好尚に対して十分の理解の上に立つた宣伝だつたと思ひますが、英語国民と独伊の国民との間には非常に大きな心理的な相違があり、好みの上でも独伊はそれ/″\違ひますけれども、今日まで日本人が接触した欧米人の中で特色を持つた民族だと思ひます。
 斯ういふ意味で独伊国民に対する日本人の接触の仕方、或は日本認識のさせ方には一つの心構と技術が必要のやうに思ふのであります。先程例に引いたドイツの人と話をして居る時にかういふ話をきいたのであります。それは自分は日本人が如何にして創られつゝあるかを一年半日本にゐて見て研究したが、主として田舎を見た。どうも大都会では自分の観察が非常に散漫になつて考を纏めるのに困難なばかりでなく、どうも大都会には日本人の本当の姿が映つて居ないやうなので主として地
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