ゐる。
三輪 君らしい道楽だね。
並木 それやさうだ。
三輪 いや、さういふ意味ぢやなくさ……。ねえ、奥さん、今日は久し振りで並木君とも会つたんですし、奥さんとは初めてお近附きになつたんだから、一つ、御一緒にゆつくり食事でもしようぢやありませんか。
三輪の妻 賛成ですわ。
三輪 お前が賛成なこたわかつとる。どうです。御差支はありますまい。
並木の妻 (夫の方を見ながら)でも……。
並木 さうさなあ。
三輪 いゝぢやないか、君……。
並木の妻 このなりぢや、あたくし……。
三輪の妻 あら、あたくしを御覧遊ばせ……。
三輪 着物なんかかまふもんですか。ぢや、どこか気の張らない処へ御案内しますよ。
並木 しかし、僕達はなんだよ……。
三輪 まあ、まかしときたまい。(妻に向ひ)ぢや、お前買ひ物があるなら、さつさと済ませて来ないか。おれはここで並木君と大に談じてるから……。
三輪の妻 (夫の耳に口を寄せて何か云ふ)
三輪 さうさ、あたり前さ。
並木 (妻に)お前も何か見るつて云つてたぢやないか。見て来いよ。
並木の妻 (夫の耳もとで何か囁く)
並木 かまふもん
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