〔metteur en sce`ne〕」の訳であるらしいから、これは別段、新しい意味に解する必要はあるまい。この言葉は、「〔mise en sce`ne〕」即ち「板にかけること」から出たものである以上、寧ろ、一般に用ひられてゐるこの言葉を土台にして考へることにしよう。
元来、演出といふものを、一つの纏つた仕事と解するやうになつたことが、近代殊に、自由劇場以後の習慣であり、また、それら運動の功績であつて、それまでは、寧ろ俳優の演技に附随する衣裳、舞台装置万端の工夫整頓を指すにすぎず、伝統を墨守する仏蘭西の一部劇壇人は、今日もなほ、「〔mise en sce`ne〕」と云へば、舞台装置のことと解してゐるくらゐである。旧称「舞台監督」は、無論 Regisseur の訳であつて、これは、独逸と仏蘭西とでは意味が違ひ、仏蘭西では、日本在来の「幕内主任」といふやうな役である。この意味から、最近の「舞台監督」が生れて来たのだとすれば、それはそれでいいわけになる。
何れにしても、今日でいふ「演出」なるものには、既に幾多の議論や主張が出てゐて、「演出法」とか、「演出学」とかいふ固くるしい研究も行はれ
前へ
次へ
全10ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岸田 国士 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング