なもの、軽々しいもの、従つて正面から問題にすべき性質のものではないといふ偏見があるからでせう。此の傾向は、現代に於てすら、文学者の間に根を卸てゐる傾向であります。尤も、此の際、一人でも優れた喜劇作者が現れゝば、さういふ偏見は消えてしまふでせうが、今日、いろ/\な形で少しづゝ頭を出しつゝある喜劇の芽が、さういふ偏見の為めに早くも成長を阻まれつゝあるといふことは、誠に残念であります。
 私はこゝで、喜劇大いに出でよと叫ぶ前に、先づ、喜劇を正しく鑑賞せよと叫ばなければなりますまい。



底本:「岸田國士全集20」岩波書店
   1990(平成2)年3月8日発行
底本の親本:「都新聞」
   1926(大正15)年8月17日〜26日発行
初出:「都新聞」
   1926(大正15)年8月17日〜26日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2006年2月19日作成
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