ために催された慈善興行の上演目録に加へられた。それから「オオバン夫人」といふ戯曲の草稿が遺つてゐることも附け加へよう。
リラダンの戯曲「新世界」は、一八七五年、亜米利加独立記念賞金を受けたことで有名になつた。アントワアヌが、自由劇場で「脱走」一幕を上演したことも記録に遺つてゐる。ゴンクウルの「教姉フィロメエヌ」と同時である。それから、「反逆」といふのはデュマ・フィスにデディケエトされた脚本で、これもデュマの骨折りで脚光を見た筈である。
ルコント・ド・リイル、ヴェルハアレン、ロデンバッハ、サマンなど詩人たちの戯曲は、何れも一時的の評判をとつただけである。
ロチイ、マルグリット、ジイド、ボルドオなどの小説家も戯曲を書いたが、これも余技の程度を出ない。
詩人にして小説家アナトオル・フランスはブウルジェと共に自作の小説を脚色してゐるが、若い頃、「ピエロの化身」といふ韻文劇一幕を書いたことを世人は大方忘れてゐる。
新しい時代の有名な作家中、タロオ兄弟、アンドレ・モオロア、ポオル・モオラン、モオリヤックなどは、揃ひも揃つて、芝居に仏頂面を向けてゐる。しかし、立てまじきは誓ひである。現に、近頃まで木石と見えたアルヌウが、そろそろこの道の味を解し出した。(一九二九・五)
底本:「岸田國士全集21」岩波書店
1990(平成2)年7月9日発行
底本の親本:「現代演劇論」白水社
1936(昭和11)年11月20日発行
初出:「悲劇喜劇 第八号」
1929(昭和4)年5月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2007年11月20日作成
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