ホしてさへ、法律的疑義を生じるといふ不都合が存在してゐることである。
もつとも重要な一例として、著作権法の第一条を挙げる。
――文書演述図画建築彫刻模型写真演奏歌唱其の他文芸学術若くは美術(音楽を含む以下之に同じ)の範囲に属する著作物の著作者は其の著作物を複製するの権利を専有す
以上の文句で、「文書」うんぬんから「歌唱」に至る一般著作物の分類は、今日からみて、なんとしても時代離れがしてゐるのみならず、「演述」とは何を指すかといふと、「浪花節など」を指すのだといふことであるから、これは実に法律の尊厳にも拘はる話だ。
さうなると、疑問はいくらでも起つてくる。一昨々年、貴族院における本法改正案の特別委員会で、三島通陽子爵が政府委員に質問をしてをられるが、それに対する答はどうも腑に落ちないものが多い。例へば、舞台装置の著作権は、その範囲が具体的の場合でないと決定が困難だといふのはよろしいとして、舞台監督の台帳即ち演出者の「フットノオト」の如きものは今度の改正案中に含まれてゐないやうだが、将来は著作物として保護を受けるやうになるかどうかといふ質問に対し、「ただ今のお話の問題もこの現行法の
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