町内の主婦代表者、関係小売業者、所轄警察等で組織される。その際、町内外の有識者の智慧を加へることも忘れてはならない。この委員会で、町内家庭に列をつくらないでも必需食料品が行き渡るやうに、実情に照らして、具体的な方法として、いろいろ細かいことがらが考へられるであらう。たとへば、
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一、註文、買入れ等は隣組でまとめてする。隣組員が交替で代表者となり、註文、買入れなどに当る。
一、隣組によつては、隣組でまとめて買入れをしても、それを分けたり金額を計算したりすることを、手ぎわよくやれる人のゐない所もある。そういふ隣組は食料品の買入れについては、近くの適当な隣組に組合せる。
一、隣組の実情によつては、隣組で買入れを纏めることのできないものもあらう。そういふ隣組では個々に買入れる外はないが、また都合のよいものだけで組を作らせるとか、他の隣組に組合せるといふこともできよう。
一、現在、店に登録した順によつて販売してゐる魚屋などの場合、番号は世帯の順を飛びとびになつてゐるから、隣組でまとめて買入れるとすれば、その日に順番に当らない世帯がでてくる。そこで委員会できめて、番号を隣組で世帯順に揃ふやうに整理する。
一、魚屋で、たとへば一番から一〇〇番までを一時から五時まで売るといふ場合に、番号によつて時間を分けることも、隣組の買入れと相俟つて効果をあげると思ふ。もちろん、早い方の組にだけ、よいものが行つてしまはないやうに、その日の入荷を分けておくことは必要である。
一、列をつくるのは、一つには店で手が足りないために、計算や受渡しに時間がかかるためでもある。その日の買入れにきた隣組の代表者たちは、その順に従つて店の手伝ひをして早くかたづくやうにする。その手伝ひのわりあての仕方なども委員会で定める。
一、隣組で食料品をまとめて買入れることはよいが、それだけでは、品物の種類や大きさなどによつては、各家庭に分配する場合に不便を感ずることもあり、また、品物の種類について、各家庭から註文や不平がいろいろ出たりして、円滑に行きにくい場合もある。かういふ不都合は、共同炊事或は共同献立配給が行はれゝば容易に解決できるであらう。委員会は町内の食生活が合理的に行はれるやうに、共同炊事や、共同献立がたやすく実行できるやうな条件の揃つた隣組に対しては、便宜と指導とを与へて、これを促進することも必要である。
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といふやうなことがらである。



底本:「岸田國士全集25」岩波書店
   1991(平成3)年8月8日発行
底本の親本:「時局雑誌 第一巻第五号」
   1942(昭和17)年5月7日
初出:「時局雑誌 第一巻第五号」
   1942(昭和17)年5月7日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年3月1日作成
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