はなからうかと、それからこの作品の載つた雑誌のありかを考へたりした。演出者の名前から推しても、あるレベルに達したものに相違ないといへるのだが、しかし僕は、この新作家の出現を、なにかしら、由々しいことのやうに感じた。
 その後多忙を極めてゐて、実はまだその作品の載つた雑誌を手にしないでゐるが、実物を読まぬさきに運試しのやうな心持で、このノオトを書きつけておきたいのである。
 それは創作座の出し物の一つ、真船豊作「鼬」のことである。この若い劇団は、今度の旗揚興行に、もう一つの岡田女史の「数」をも含めて、先づその出し物に於ては成功したと断じてよからう。
 プログラムの誘惑とはかくの如きであらう。(一九三四・一〇)



底本:「岸田國士全集22」岩波書店
   1990(平成2)年10月8日発行
底本の親本:「現代演劇論」白水社
   1936(昭和11)年11月20日発行
初出:「劇作 第三巻第十号」
   1934(昭和9)年10月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年9月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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