ある場合は、こんな芝居を上演すると、周囲が黙つてゐない。日本では、それが平気と見える。現に、ロツパ自身にしても、世が世ならこんなことはやらないだらう。世間も許し、劇場も希望し、ひとかどの見物が金を払つて押し寄せるから、しかたがなしにやつてゐるのであらう。
だから、大衆は、これ以外のものを求めず、これが最後の切札だと思つたら間違ひだ。私が切に、古川緑波氏に望むところは、現在の興行が如何に当つてゐても、徐々に、本格的な訓練を積み、大衆的な性格を失はない限り、いや一層大衆的であるために、俳優群の「人間的魅力」を精神の面で発揮させるやうに今から心掛けて欲しい。
底本:「岸田國士全集23」岩波書店
1990(平成2)年12月7日発行
底本の親本:「文学界 第四巻第三号」
1937(昭和12)年3月1日発行
初出:「文学界 第四巻第三号」
1937(昭和12)年3月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2009年11月12日作成
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