『敗戦の倫理』編者のことば
岸田國士

 こゝに集めたいくつかの文章は、最近の諸雑誌を通じて私の眼にふれたもののなかから、これは是非青年諸君に熟読してもらひたいと思つた評論感想の類を選んで再録したものである。
 執筆者はいづれもそれぞれの方面で一家を成し、かつ、いろいろの意味で、私の日ごろ信頼をおいてゐる人々であつて、これらの文章はもちろん、温かい、まじめな態度で敗戦日本のすがたを直視し、高い識見によつて祖国の向ふべき方向を指し示したものである。
 特に解説のやうなものが必要ではないかと思はれるところもあり、読者によつては多少わかりにくい理論がゝつた文章もあるにはある。しかし、考へながら読むことが思想を深めることになり、苦心をしてやつとわかることは、読書の楽しみの一つである。それを思へば、これくらゐの文章を読みこなす力は、日本人みんながもつてゐて然るべきである。
 時によつて、これらの文章が、青年諸君の間で話題になることも望ましい。または、読書会のやうな催しに、これらがテキストとして用ひられることもあつていいやうに思ふ。
 われわれ日本人は、なにはともあれ、思想の貧しさによつて、この戦
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