たことはいへないが、なんとなく、山田美妙斎といふ人はハイカラではなかつたかといふ気がする。
 ハイカラ詩人として、私は与謝野晶子夫人、並びに初期の北原白秋氏を挙げたい。
 現代作家中では、芥川竜之介氏、佐藤春夫氏、室生犀星氏、などは、多くの「ハイカラさ」をもつた作家であらうと思ふ。新進作家のうちで、稲垣足穂氏、川端康成氏、横光利一氏、林房雄氏などの文章はハイカラな方であらう。
 かういつたからとて、何も、私は、ハイカラなるが故に傑れた芸術作家だとは思つてゐない。そんなことは断るまでもないが、とかくさういふ勘違ひをされがちであるから、念のためにつけ加へておく。
 しかしながら、私は、自分一個の趣味からいつて、上に述べたやうな意味の「ハイカラな文学」が、もう少し盛んになつてもよくはないかと思つてゐる。それについては、世間にもう少しよい意味の「ハイカラ好み」が殖えてくれればいいがと思つてゐる。一見ハイカラさうに見えて、その実、ちつともハイカラでない青年男女、さういふ青年男女を見るにつけて、私なんか、ちつともハイカラでもなんでもないが、少くとも、ほんとにハイカラな人々に取巻かれてゐる快感を空想
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