促進するより外ないと思ふ。
 僕は、もうこゝまで来たら、西洋式にする方が合理的だと思ふ。それには、西洋の風俗といふものを、始めから研究し直す必要がある。そして、その「近代的」「文化的」な部分を洩れなく取り入れる。さうすると案外「西洋人」の真似をしなくてもすむやうな気がするのである。
 早い話が、和服といふものを廃止するとする。さうしてはじめて洋服が日本人向きに改造されるのである。日本音楽を絶対にやらせぬことにする(大体にセンチメンタルでいかんから)。すると、西洋楽器を使つて、現在の歌謡曲みたいなものもやれないことになる。程度の判別はむつかしいが、これはやつて出来ないことはない。かうなると、音楽家は本気になつて新日本音楽を作ることに努力するだらう。
 所謂「頭をさげる」お辞儀を廃止する。そこで、握手をさせるとなると、その仕方を工夫するやうになる。日本人の性情に合つた、例へば指先だけを触れ合ふやうにつゝましい挨拶の方法を思ひつくだらう。
 そういふ時代が早く来ないものか。



底本:「岸田國士全集23」岩波書店
   1990(平成2)年12月7日発行
底本の親本:「一橋新聞」
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