や》せている場合には、家畜はもちろん永い間そこに止まることが出来ず、従って風が吹くたびに種子が運ばれて土地は再び樅が密生することとなるのである。
ノルウェイ及びスウェーデンにおけるこの種の多くの土地を観察して、私は、――これは他の理由からするとほとんど不可能な想像なのであるが――かかる外見からすると、これらの国が現在よりも過去の方が人口が多かったかもしれず、また現在森林で蔽われている土地も一千年以前には穀物を生産したかもしれぬ、と想像してもよかろうという感想に、打たれざるを得なかった。戦争や疫病《ペスト》やまたそのいずれよりも有力な人口滅殺者たる暴政が、突如として住民の最大部分を破壊しまたは追放したかもしれぬ。そしてノルウェイまたはスウェーデンで二、三十年間も土地を放置しておけば、国の外見にははなはだ奇異な変化が生ずることであろう。しかしこれはただ私が云わないでいられない一つの感想にすぎず、これは私をしてこの事実を少しでも信ぜしめるほどの力のあるものではないことは、読者の既に知られるところである。
スウェーデンの農業に戻ろう。国民の勤労が足りないかどうかを別問題として、この国の政治制度には、その耕作の自然的進歩を阻害するある事情が確かにある。今日なお若干の煩わしい賦役制度が残存しており、これは一定の土地の所有者が王領のために負担させられるものである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。この国の駅逓は確かに安価で旅行者に便利であるが、しかしその実施のためには農業者は人間の点でも大きな労働の浪費をしなければならぬ。スウェーデンの経済学者の計算によれば、この制度の廃止によって浮く労働だけで、年三〇〇、〇〇〇タンの穀物が生産されるであろうという2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。スウェーデンでは市場が非常に遠く、またそのほとんど必然的な結果として、分業が非常に不完全であるためにも、時間と労力の大きな浪費が生ずる。そしてスウェーデンの農民の間に勤労と活動との著しい不足は何もないとしても、最上の輪作法や土地を施肥し改良する最良の方法についての知識の不足は、確かにあるのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] 〔Me'moires du Royaume de Sue`de, ch. vi. p. 202.〕
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