[謀を進めさえすればよいとしているか、または乱暴な気違いの狂熱家であってその馬鹿々々しい思索や飛んでもない背理は理性ある何人もそれに注意を払う必要のないものである、と考えがちである。
『人間と社会との可完全化性を擁護する者は、現存制度の防衛者をこれ以上の軽蔑をもって応酬している。すなわちこれに烙印するに最も惨めな狭隘な偏見の奴隷をもってし、またただ自分がそれにより利益を得るので市民社会の弊害を防衛するものなりとしている。更にまたこれを劃くに利益のために悟性を売買するの徒なりとし、またその精神力は偉大にして高尚なるものはいずれもこれを把握する力なく、身の前五|碼《ヤード》以上を見る明なく、従って叡智に富む人類の恩人の見解を取容れることは全然出来ないものとしている。
『かくてこの敵対の中にあって真理の大道は苦難せざるを得ない。この問題を論ずる両方面にはいずれも真によい議論があるのだけれども、それは正当の力を発揮するを許されないでいる。双方は自説を執って、反対側の者が述べる所を注意して自説を訂正改善しようとはしない。
『現存秩序を擁護する者は一切の政治的思弁を概括的に否としている。彼は退いて
前へ 次へ
全389ページ中5ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
吉田 秀夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング