瞭かつ不規則ではあるが、存在することは、この問題を深く考察する思慮ある人のよく疑い得るところではないのである。
 この擺動が、当然予想されるほどは今まで述べられておらず、またそれほどはっきりは経験によって確かめられていない、一つの主要な理由は、吾々が所有する人類の歴史が一般に単に上流階級のみの歴史であるからである。吾々は、人類のうちでかかる後退前進の運動が主として起る部分の行状と習慣とについて、当てになる記述はたくさん有っていない。一つの民族、一つの時代につき、この種の満足な歴史をつくるためには、多数の注意深い観察者が、不断の細心の注意をもって、社会の下層階級の状態とそれに影響を及ぼした原因とに関する、地方的なまた一般的な記述を行うことが必要であろう。そしてこの問題に関して正確な推論をひき出すためには、かかる歴史家が数世紀に亙《わた》って続いて出ることが必要であろう。この方面の統計的知識は、近年、ある国々において取扱われている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そして吾々は、かかる研究の進歩から人類社会の内部構造をもっとはっきり知り得るに至ることを期待し得よう。しかしこの科学はなお
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