横、行右小書き]。ヨオロッパ及びアジアの種々なる定着国家は、その優れた人口と優れた技術により、その破壊的集団に対する突破し難い障壁を設けることは出来たが、彼らは相互の間の闘争によってその過剰人口を浪費した。しかし定住的国家の弱点、またはこれらの放浪的種族の多くの一時的結合が、彼らに優越権を与えるや否や、暴風は地球上の最も美しい地方に狂い、そして支那、ペルシア、エジプト、イタリアは、時を異にして、この野蛮人の洪水に蹂躪されたのである。
[#ここから2字下げ]
1)[#「1)」は縦中横] 大韃靼民族の各種の分岐、分裂、及び争闘は、Genealogical History of the Tartars by the Khan Abul Ghazi (translated into English from the French, with additions, in 2 vols. 8vo.) に面白く述べてある。しかしすべての歴史の不幸は、少数の王侯や指揮者の特殊の動機はその様々の野望的企図において時に正確に詳述されているけれども、彼らの旗幟の下に自ら望める追随者を蝟集《いしゅう》せしめた原因は、しばしば全く看過されている、という事実である。
[#ここで字下げ終わり]
以下の記述は、ロウマ帝国の没落で有力に例証される。ヨオロッパ北部の牧畜民は、久しい間、ロウマの武器の力とロウマの名前の恐怖とで、阻止されていた。新しい植民地を求めるサンブリ族の恐るべき侵入は、五執政官の軍隊を撃破したので名を得たが、遂にはその勝利の進軍は結局マリウスによって食い止められた。そしてこの野蛮人は、この有力な植民者のほとんど完全な絶滅によって、その軽率を後悔せざるをえなかった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。ユリウス・ケイザル、ドルスス、チベリウス、ゲルマニクスの名は、彼らの心にその同胞の殺戮によって印象され、引続きロウマの領土に侵入することを恐れさせた。しかし彼らは討滅されたというよりもむしろ征服されたのであった2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。そして彼らが送り出した軍隊や植民者は殺されるかその故郷に追い帰されるかしたが、しかし大ゲルマン民族の力は依然として害されず、自らのためにその剣によって活路を打開し得る所へは、どこへでも絶えず引続いてその剛気な子孫を送り出す準備を整えていた。力弱いデキウス、ガッルス、エミリアヌス、ヴァレリアン、ガリエヌスの治世は、かかる活路を与え、その結果として野蛮人の一般的侵入を蒙った。数ヶ年間にスカンジナヴィアからユウジンに移住したと想像されるゴオト族は、年々貢納を納めるということでその戦勝軍を撤退することに同意した。しかしロウマ帝国の富と弱点との危険な秘密が、かくして世界に暴露されるや否や、新らしい野蛮人の群は、ただちに辺境地方に荒廃の手を拡げ、そしてロウマの入口までも恐怖を蔓延させた3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。フランク族、アレマニ族、ゴオト族、及びこれら一般的名称に含まれている、もっと小さな種族の冒険者は、急流の如く帝国の各地方に乱入した。掠奪と圧制とは現在の生産物と将来の収穫の希望とを破壊した。長い一般的な飢饉に次いで消耗性の悪疫が起り、これは十五年間、ロウマ帝国の各市各州を蹂躪した。そしてある地方の死亡率から判断して、数年にして、戦争、流行病、及び飢饉は人口の半ばを奪い去ったものと考えられた4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。しかも移住の潮は依然北部から時々猛然とやって来た。そして相継ぐ武勇の皇子は、先代の不運を恢復し、帝国没落の運命を阻止するために、ヘルクレスの苦難をなしとげて帝国の領土を野蛮人の侵入から守らなければならなかった。二五〇年及びその後数年、海陸両路から帝国を蹂躪し種々成功を収めたゴオト族は、遂にその冒険部隊のほとんど全部を失ったけれども5)[#「5)」は縦中横、行右小書き]、二六九年には、植民の目的をもって、妻子を伴う莫大な数の移住民を送り出した6)[#「6)」は縦中横、行右小書き]。最初には三二〇、〇〇〇の野蛮人から成ると云われた7)[#「7)」は縦中横、行右小書き]この恐るべき一団は、遂にはクラウディウス帝の武力と智力によって撃破され追い散らされた。その後継者アウレリアンは、そのウクライナの植民地から出て来た同じ名の新集団と戦いこれを滅した。しかし暗黙の平和条件の一つには、彼はダシヤからロウマ軍を撤退し、この広大な州をゴオト族とヴァンダル族とに委ねなければならぬ、とあった8)[#「8)」は縦中横、行右小書き]。その後まもなく、アレマニ族の新らしいはなはだ恐るべき侵入が世界の覇権奪取の脅威を与え、アウレリアンは三度の大規模な血腥い戦闘を行った後、ようやくにしてこの破壊的
前へ
次へ
全98ページ中40ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
吉田 秀夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング