オ吾々がアメリカ土人のこの情熱不足を彼らの体躯の自然的欠陥と考えずに、単なる一般的の冷淡であり、情欲衝動が余り来ないからであると考えるならば、吾々は一家族に対する子供の数に影響を与えるものとして、それに重きをおく気にはならないであろう。そしてむしろこの少産性の原因を蒙昧状態における女子の境遇と習慣に求める気になるであろう。そしてかくすれば、吾々は問題の事実を説明すべき十分な説明を見出すことになるであろう。
 ロバトスンは正しくも次の如く述べている。『男子が技術や文明の進歩によって改良されたかどうかということは哲学者の間で矢釜《やかま》しく論ぜられて来ている問題である。ところで女子の境遇の幸福な変化がその洗練された優雅な挙措に負うものであることは、疑をいれえない点である1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。』世界のあらゆる地方において蒙昧人に最も一般的な特徴の一つは、女性を軽蔑し貶すことである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。アメリカの種族の大抵においては、女子の境遇は余りにひどすぎて、奴役という言葉はその悲惨な状態を表すには、やわらかすぎる。妻は牛馬と同じである。男がその日を怠惰と安逸に送っているとき、女は絶えず労役に服している。仕事は容赦なく彼らの上に課せられ、そして奉仕は満足も感謝もなしに受入れられる3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。アメリカのある地方では、こうした悲惨な状態が余りひどいので、母親はその女児を、こうした悲惨な奴隷の運命に陥るにちがいないこの世から、速かに救い出すために殺したのである4)[#「4)」は縦中横、行右小書き](訳註)。
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 1)[#「1)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 103.
 2)[#「2)」は縦中横] 〔Id. b. iv. 103. Lettres Edif. passim. Charlevoix, Hist. Nouv. Fr. tom. iii. p. 287. Voy. de Pe'rouse, c. ix. p. 402. 4to. Lodon.〕
 3)[#「3)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 105. Lettres Edif. tom. vi. p. 329. Major, Roger's North America, p. 211.
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