の仲間から追われ、彼ら自身の剣で新らしい土地を探検し、彼ら自身のためのより[#「より」に傍点]幸福な居所を獲得せよと教えられる。
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『世界はすべて彼らのえらぶがままにまかされた。』
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現在の困窮にせき立てられ、より[#「より」に傍点]明るい将来の希望に輝き、そして敢為進取の精神に駆り立てられて、これらの勇敢な冒険者は、これに抗するあらゆる者にとり恐るべき敵となりがちである。平和な商業や農業に従事している、久しく定住された国の住民は、かかる有力な行動の動機に促されている人間の力にしばしば抗し得なかったことであろう。そして彼らと同一の境遇にある種族との頻々たる闘争は、いずれも生存のための闘争に外ならないのであり、従って、敗北の罰は死であり勝利の賞は生であるという反省に促されて、決死的な勇気をもって戦われたことであろう。
かかる蒙昧な闘争において、多くの種族は完全に絶滅したに違いない。多くのものはおそらく困苦と飢饉とで死滅したことであろう。しかし指導者がもっとよい指導をした他の種族は、大きな有力な種族となり、そしてみずから他に居所を求める新しい冒険者を送り出した。これらのものは最初は親の種族に恭順を致したことであろう。しかしまもなく彼らを結ぶ紐帯はほとんどなくなり、そしてその力、その野心、またはその便宜の支持するところに従って、友誼関係を持続しまたは敵となった。
余地と食物とを求めるこの不断の闘争によって起る莫大な人命の浪費は、不断の移住の習慣によってある程度自由に発揮されつつある有力な人口増加力によって補われる以上のものであったであろう。場所の変更によりその境遇を改善しようという一般の希望、掠奪に対する不断の期待、困窮した場合にはその子供を奴隷に売ることが出来るということは、野蛮人の生れながらの不用意と相俟って、後に至って飢饉と戦争により圧縮することになる人口を作り出すにすべて役立つことであろう。
より[#「より」に傍点]肥沃な地方を所有する種族は、それを不断の戦争によって獲得し維持したのであろうけれども、生活資料の増加によりその人口と力とを急速に増加し、遂には支那の辺境よりバルチック海沿岸に至る全領域は、かの勇敢、強壮、進取的な、艱難に馴れ、戦を好む、各種の野蛮人の種族の占拠するところとなった1)[#「1)」は縦中
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