ナある、けだし、価値なる語に附せられた曖昧な観念から生ずるほどの、かくも多くの誤謬と、かくも多くの所見の相違が起る源泉は、他にないからである。
もし、貨物に実現された労働の分量が、その交換価値を左右するとするならば、労働の分量のあらゆる増加は、それに労働が加えられる貨物の価値を増加せしめなければならず、またそのあらゆる減少はそれを下落せしめなければならない。
(七)かくも正確に交換価値の源泉を定義し、そして論理を一貫させるためには、すべての物はその生産に投ぜられた労働の多いか少いかに比例してその価値が多くなるか少くなると主張すべきであったアダム・スミスは、彼自身もう一つの価値の標準尺度を立て、そして物は、この標準尺度の多くまたは少くと交換されるに比例して、価値が多くまたは少いと言っている。時に彼は標準尺度として穀物を挙げ、また他の時には労働を挙げている。そしてここに労働というのは、ある物の生産に投ぜられた労働の分量ではなくて、市場においてそれが支配し得る労働の分量なのである。すなわちこれらは同一事の異る二つの表現であるかの如くに、そして、人の労働の能率が二倍になり、従って一貨物の二倍
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