「て許される限りの発展をしたのであるが、同時にまたブルジョア的生産の矛盾はこの学派の固有の歴史的限界に制限されて、生産方法そのものの矛盾としてではなく、理論的構造内部における解決しがたい矛盾として顕現していることが、彼れの体系にとって特徴的となっている。このことは、例えば本書巻頭における労働価値論における平均利潤の問題――またはいわゆる価値と生産価格との矛盾の問題――に最もよく露呈している。しかもそれにかかわらず、彼がこの問題を黙殺して進まずこれが解決に正面から取組んだこと、更にまた本書の第三版に至って改めて『機械について』の諸問題を真剣に取りあげたことは、その歴史的限界性にもかかわらず、彼れの偉大さをよく物語るものといわなければならない。彼れの全理論が後にマルクスによって最も正しい意味において発展的に止揚されたことは、人のよく知るところである。
 本訳書は、底本をその第三版にとり、更にゴナア教授の傍註をもたぶんにとり入れ、その上にかなりの訳者註を加えて、出来上ったものである。私はかつて昭和七年に本書を同じく春秋社から出版したことがある。当時すでに本書については、堀經夫博士及び小泉信三
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