qべている、『価値という言葉は、二つの異った意味を有《も》っており、ある時にはある特定物の効用を言い表わし、またある時にはその物の所有が齎《もた》らす所の他の財貨を購買する力を言い表わす。前者は使用上の価値[#「使用上の価値」に傍点]、後者は交換上の価値[#「交換上の価値」に傍点]と呼ばれ得るであろう。』彼は続けて言う、『最大の使用上の価値を有つ物が、しばしば、ほとんどまたは全く交換上の価値を有たず、また反対に、最大の交換上の価値を有つものが、ほとんどまたは全く使用上の価値を有たない。』(訳者註)水や空気は極めて有用であり、それらは実に生存に不可欠のものであるが、しかも普通の事情の下では、これらと交換して何物も得ることは出来ない。反対に金は、空気や水と比較すればいくらも有用ではないが、多量の他の財貨と交換されるであろう。
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(訳者註)アダム・スミス著『諸国民の富』キャナン版、第一巻、三〇頁。
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(二)しからば効用は、交換価値にとって絶対的に不可欠ではあるが、その尺度ではない。もし一貨物がどうしても役に立たないならば、――換言すれば、もしそれ
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