する。八月の終り頃には特に鉄夜《アイアンナイト》とよばれる三夜があるが、その名はそれにより往々にして大豊作の見込を無にしてしまうところから出たものである。かかる場合には下層階級は必然的に困窮するが、しかしいずれも家畜を飼っているところの前述の家人《ハウスマン》を除けば、独立の労働者はほとんどいないのであるから、松の内皮をパンに混入しなければならぬというほどの困窮も、一般に冬の食料として蓄えることの出来るチイズや、塩バタや、塩肉や、塩魚や、ベイコンによって、緩和されるのである。穀物の不足によりもっとも困窮する時期は、一般に、収穫前の約二箇月である。そしてこの時には、極貧の家人《ハウスマン》でも一般に二、三頭は有ち多くの者は五、六頭を有っている牝牛は、乳が出始めるので、家族には、特に子供達には、大いに助けになるはずである。一七九九年の夏、ノルウェイ人の顔には豊饒と満足の色が浮んでいたが、その隣国のスウェーデン人は絶対的飢餓に悩んでいた。そして家人《ハウスマン》の息子や農業者の男児が、英蘭《イングランド》の同じ年齢、類似の境遇の男児よりも、よくふとっており、脚も発達していたことが、特に私の注
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