充たすために、満月のたびに一人ずつ奴隷を殺すと云われている4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. viii. p. 105, 271; tom. vi. p. 266.
2)[#「2)」は縦中横] 常に慎重なキャプテン・クックすら、ニュウ・ジイランド土人について次の如く云っている、『彼らがこの種の食物が大好物であることは、明かすぎるほど明かである。』Second Voyage vol. i. p. 246. また最後の航海記では、彼らの絶え間ない争闘について曰く、『またおそらくおいしい御馳走に対する願望が少なからざる刺戟をなすものであろう。』Vol. i. p. 137.
3)[#「3)」は縦中横] Cook's Third Voyage, vol. ii. p. 271.
4)[#「4)」は縦中横] Meares's Voyage, ch. xxiv. p. 255.
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自己保存という優越原則は、蒙昧人の心の中で、彼れの属する社会の安全と力とに極めて密接に結びついているので、もっと開けた国民の間に見られるような戦争上の名誉や勇気という観念を少しも許さない。彼が見張っている敵から逃げ、そして自分自身の体に、従って自分の団体に、危険を及ぼすに違いない闘争を避けるのが、アメリカ土人にとって名誉な行為なのである。武装を整え抵抗の準備をしている敵を攻撃するには、十対一という優勢が必要である。そしてそんな時でさえ各人は第一に進むのを恐れるのである1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。最も優れた戦士の大きな目的は、狡智と詐術のあらゆる術策と、彼れの智恵が考え得るあらゆる戦略と奇襲によって、自己の最小の損失で敵を弱め亡すことである。敵と同等の条件で戦うのは最上の愚とされている。戦士は名誉な死とは考えられず2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、不運と考えられ、死者の軽率不慎慮として記憶される。しかし、幾日も幾日も機をうかがい、最も安全な、最も抵抗力の少い時に敵を襲い、深夜に敵に接近してその小屋に火を放ち、敵が裸で無防禦で焔から逃げるところを虐殺するのは3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]、名誉な行為なのであり、これは感謝する仲間の胸に永久に記憶されるであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. vi. p. 360.
2)[#「2)」は縦中横] Charlevoix, No. Fr. tom. iii. p. 376.
3)[#「3)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 155. Lettres Edif. tom. vi. p. 182, 360.
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かかる戦法は明かに、蒙昧生活の困難と危険の下において若い人間を育てるのに伴う困難を意識するから生じたものである。そして強大な破壊原因は、ある場合には、人口を生活資料よりもはるかに低く保っておくほどに大であろう。しかしアメリカ土人がその社会の縮少を恐れる様を現わし、またそれを拡大せんとする明かな希望を現わすということは、一般に事実もその通りであるということの証拠ではない。各々の社会で相食い合うようなその国はおそらく増加人口を養い得ず、一種族の力の増加は、それに対し、比較的弱くなったその敵から新しい生活資料の源泉を新しく奪う途を与える。そして反対に、その成員の減少は、残った成員に対し前よりも豊富に食物を与えるどころか、かえってより[#「より」に傍点]強い種族の侵略による絶滅や飢饉を蒙らしめることとなるのである。
本来は単にグアラニイ族の一小部分に過ぎなかったシリグアンヌ族は、彼らのパラグアイの故国を去って、ペルウに近い山中に定着した。彼らはこの新しい国で十分な生活資料を見出し、急速に増加し、近隣を攻撃し、そして優れた勇気と優れた財産とによって次第にこれを絶滅し、その土地を奪った。広大な土地を占領し、そして数年にして三四千人から三万人に増加したが1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、近隣のより[#「より」に傍点]弱い種族は日に日に飢饉と剣とによって減少して行った。』
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1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. viii. p. 243.『シリグアンヌ族は恐ろしく増加し、わずか数年にしてその数は三万に上った。』
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かかる事例は、アメリカ土人ですら、好都合の事情の下においては急速に増加するものであることを証明し、またあらゆる種族がその成員の減少を恐れ、そして現実に所有する領土内の食物の豊富を仮
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