61.
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 宣教師は、南アフリカのインディアンについて、彼らが治療法を知らない病気に絶えずかかると云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。最も簡単な薬草を用いることも、またはその粗雑な食事を変えてみることも知らず、彼らは数多くこれらの病気で死んでしまう。ジェスイット僧のフォークは、彼が旅行した各地ではどこでも老人はただの一人も見なかったと云っている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。ロバトスンは、蒙昧人の寿命は、よく整った勤勉な社会におけるよりも短いと断定している3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。レイナルは、蒙昧生活をしばしば擁護しているにもかかわらず、カナダのインディアンについて、もっと整った安穏な生活方法をしている吾々国民ほど長生きするものはほとんど無いと云っている4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。そしてクックとペルウズは、アメリカの西北海岸の住民のあるものについて述べているところで、これらの意見を確認しているのである5)[#「5)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. viii. p. 83.
 2)[#「2)」は縦中横] Id. tom. vii. p. 317, et seq.
 3)[#「3)」は縦中横] Id. b. iv. p. 86.
 4)[#「4)」は縦中横] Raynal, b. xv. p. 23.
 5)[#「5)」は縦中横] 〔Cook's Third Voy. vol. iii. ch. ii. p. 520. Voy. de Pe'rouse, ch. ix.〕
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 南アメリカの大平原においては、広い沼や雨期に続く洪水に焼けつくように照りつける太陽は、時に恐るべき流行病を惹き起す。宣教師は、インディアンの間にしばしば伝染病が起り、そして時々その部落に大きな死亡率を生ずると云っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。天然痘は至る処に猖獗を極めるが、それは注意が足りずまた住居が狭いので、これに罹った者は、ほとんど全く恢復しないからである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。パラグアイのインディアンは、ジェスイット僧が世話や注意を払っているにもかかわらず、非常に伝染病に罹ると云われている。天然痘と悪性熱病は、それがもたらす惨害からして、悪疫と呼ばれているが、これはしばしば盛んな伝道を駄目にしてしまうのであり、そしてウロアによれば、伝道が始まって以来の時間と彼らの非常に平和な生活とに比例してそれがその勢を増さないのは、この原因によるのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. viii. p. 79, 339; tom. ix. p. 125.
 2)[#「2)」は縦中横] Voyage d'Ulloa, tom. i. p. 349.
 3)[#「3)」は縦中横] Id. tom. i. p. 549.
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 かかる流行病は啻に南方のみに限られるものではない。それはもっと北の民族にも稀しくないかの如き記述が行われている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。そしてキャプテン・ヴァンクウヴァは、アメリカ西北方海岸の、最近の航海記において、明かにこの種のある疾病から起った極めて異常な荒廃を、報告している。ニュウ・ダンジェネスから海岸を百五十|哩《マイル》彼は通過したが、前と同じ数の住民を見たことは一度もなかった。人影のない部落がしばしばあったが、それはいずれも、以前にこの地方に散らばっていた蒙昧人を全部収容するに足るほど大きかった。彼が行った色々の地方で、特にポオト・ディスカヴァリ附近では、人間の頭蓋骨、肋骨、脊髄骨、その他種々の人体の遺物が滅茶苦茶にたくさん散乱していた。そして生き残ったインディアンの身体には戦の傷痕は何もなく、また恐怖や不安の特別な徴候は何も認められなかったのであるから、この人口減少は流行病により生じたに違いないと考えるのが最も当然である2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。天然痘はこの海岸地方におけるインディアンでは普通であり、致命的なものであるように見える。その消し難いあばたは多くの者に見られ、また若干はそれにより一眼の視力を失っていたのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] Lettres Edif. tom. vi. p. 335.
 2)[#「2)」は縦中横] Vancouver's Voy. vol. i. b. ii. c. v. p.
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