は、この紳士の報道を熟読すれば、人道心を有つ人は何人も戦慄を感ずるであろう、と云っている2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Meares's Voyage, ch. xxiv. p. 266.
2)[#「2)」は縦中横] Id. ch. xi. p. 132.
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キャプテン・ヴァンクウヴァは、ヌウトカ・サウンド北方の人民のあるものは、松の木の内皮と海扇貝《ほたてがい》とで作った練りものを食って非常に悲惨な生活をしている、と語っている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。ボオトに乗って出たある時、一隊のインディアンに出会ったが、彼らは若干の比目魚を持っていたので、非常に高い価格を申し出たけれども、一匹も分けてはくれなかった。これはキャプテン・ヴァンクウヴァの云うように、珍しいことであり、非常に食糧の乏しいことを物語るものである2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。一七九四年にヌウトカ・サウンドでは魚が非常に欠乏して、べらぼうな高価になった。季節が悪かったか不用意であったかして、そのために住民は冬の間食物の欠乏により最大の窮状に陥ったのである3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] Vancouver's Voyage, vol. ii. b. ii. c. ii. p. 273.
2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 282.
3)[#「3)」は縦中横] Id. vol. iii. b. vi. c. i. p. 304.
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ペルウズはポオト・フランソアの近隣のインディアンは、夏の間は漁撈により最も豊かに暮すが、しかし冬には欠乏により死滅に瀕する、と述べている1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。
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1)[#「1)」は縦中横] 〔Voyage de Pe'rouse, ch. ix. p. 400.〕
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従って、ケイムズ卿が想像しているように、アメリカ土人の種族は、牧畜または農業状態をして彼らに必要ならしめるに足るほど増加したことがない1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、というのではなくて、何らかの原因によって、かかるより[#「より」に傍点]豊富な食物獲得方法を十分に採用せず、従って人口稠密になるほど増加しなかったのである。もしも飢餓のみで、アメリカの蒙昧種族の習慣がかくの如く変り得るのであるならば、私は、狩猟民族や漁撈民族が一つでも残っているとは考えられない。しかしこの飢餓という刺戟に加うるに、ある好都合な一連の事情が、この目的のためには必要なのであることは、明かである。そして疑いもなくかかる牧畜または農業という食物獲得手段は、おそらく、まず、それに最も適した土地において、そしてその地の自然的肥沃度が、より[#「より」に傍点]多くの人間が一緒に住むことを許すことによって、人間の発明力を発揮させるに最も都合の好い機会を与えた土地において、発明され改良されることであろう。
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1)[#「1)」は縦中横] Sketches of the History of Man, vol. i. p. 99, 105. 8vo. 2nd edit.
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吾々が今まで考察して来た所のアメリカ土人の大部分にあっては、極めて高い程度の平等が行われているので、各社会の全成員は、蒙昧生活の一般的困難と随時的飢饉の圧迫とをほとんど等しく分け合っているのである。しかし南方諸民族の多く1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]、例えばボゴタにいるもの、ナッチェス族2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]、特にメキシコやペルウにおいては、大きな階級差別が行われていて、下層階級は絶対的隷従の状態にあるので3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]、おそらくは、生活資料が欠乏する時には、かかる階級が主として被害を受け、そして、人口に対する積極的妨げはほとんどもっぱらこの社会部分に働くのである。
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1)[#「1)」は縦中横] Robertson, b. iv. p. 141.
2)[#「2)」は縦中横] Lettres Edif. tom. vii. p. 21. Robertson, b. iv. p, 139.
3)[#「3)」は縦中横] Robertson, b. vii. p. 109, 242.
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アメリカ・インディアンの間に起った極めて異常な人口減少は、ある人にとっては、ここに樹立せんとする理論と矛盾するように見えるかもしれない。しかしこ
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