ェでも利用するを常とさせられていたのであった1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。彼らは、実に盗んで来たもの以外は、壮健な家畜のどんなものでもほとんど滅多に殺すことはなかった。そして盗んで来たものは、見つかることを恐れて、直ちに飽食してしまった。傷馬や廃馬、または伝染病以外の疾病で死んだ獣類は、最も望ましい食物と考えられた。最も貧しいカルマック族のあるものは、腐敗を極めた肉を喜んで食い、また家畜の糞すらも食った2)[#「2)」は縦中横、行右小書き]。多数の子供は云うまでもなく栄養不良で死亡した3)[#「3)」は縦中横、行右小書き]。冬期には下層階級のすべては寒さと飢餓とに烈しく悩んだ4)[#「4)」は縦中横、行右小書き]。一般的に云って、彼らの羊の三分の一、またはしばしばそれ以上が、冬期に、どれだけ彼らが世話しても死亡した。そして時期おそく雨または雪の後に霜が来て、家畜が草を得られない場合には、彼らの畜群の死亡は一般的となり、そして貧民階級は避くべからざる飢饉に曝されたのである5)[#「5)」は縦中横、行右小書き]。
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 1)[#「1)」は縦中横] 〔De'couv. Russ. tom. iii. p. 275, 276.〕
 2)[#「2)」は縦中横] Id. p. 272, 273, 274.
 3)[#「3)」は縦中横] Id. p. 324.
 4)[#「4)」は縦中横] Id. p. 310.
 5)[#「5)」は縦中横] Id. p. 270.
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 彼らの腐敗した食物と、彼らを取り巻く腐敗した蒸気から主として生ずる悪性熱病、及び疫病《ペスト》の如くに恐れられる天然痘は、時に彼らの人口を稀薄にした1)[#「1)」は縦中横、行右小書き]。しかし大体において、彼らの人口は、その生活資料の限界を著しく緊密に圧迫したのであり、従って欠乏とその欠乏から生ずる疾病とが、彼らの増加に対する主たる妨げと考えられ得よう。
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 1)[#「1)」は縦中横] 〔De'couv. Russ. tom. iii. p. 311, 312, 313.〕
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 夏期に韃靼を旅行する人は、おそらく、広大なステップが無人のままにあり、そしてそれを消費する家畜がいないので牧草が蓬々《ほうほう》と荒れるに
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