ヘ悟性または意思の働きたる服従とは何らの適法的関係をも有ち得ない。されば、あるべきものは『政府なき簡単な社会形態』でなければならない。更に彼れの共産主義は如何というに、有用物の所有ないし消費を決定するものは正義でなければならない。換言すればそれは必要ないし欲望によって決定されなければならない。他方労働もまた万人の共通に担当するところでなければならない。従って、もし一方では奢侈に耽り得る人がいるのに、他方健康や生命を破壊してまでかかる奢侈に必要な物資の生産に従事するものがいるのは、正義に反することである。結局生産及び消費の全分野において共産主義が導入せらるべきである、というのである。ただここに注意すべきは、彼が、人口の増加によるかかる理想社会の終局的困難を予想していたことである。しかし彼によれば、その時は遠いのであるから、かかる遠い将来の困難が予想されるからといって、現在の実質的進歩に躊躇すべきではない、というのである。
 彼はなおこれに続いて『研究者』を著している。これはマルサス父子の論争を誘発し、その結果として子マルサスが『人口論』第一版を著すこととなったものであるが、しかし理論的興
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