俸給なるものは、昔大名が石高に応じて兵士を養うたと同様、本人の生活の必要に応じて与えられまた受けるものであるゆえ、高給を受ける職長、幹部の人々はみなそれ相応の生活をするのがよろしく、それでも済むからといって薄給の部下と同等ではいけません。また薄給の若い人が、よい生活をしたがり、先輩と交際を競うようなことがあれば、これは僣上の沙汰です。
 それからまた妻君がだらしなくて、主人の収入を全部消費し、まだそれで不足を感じるなどというのがあるとすれば、病気その他万一の場合にはどうするか、たちまち困難に陥り、朋輩に借金でもして一時をしのがねばなるまい。しかしふだんの時でも不足勝ちであったものが、その借金を返すことは容易でなく、ついには不処理の結果、店を退去しなくてはならぬようなことにもなる。
 またこれに反し、妻君があまりがっちりしていて、主人に小遣いを持たせず、子供におやつを与えず、専ら貯金のみに腐心するというようだと、節約のために家族は栄養不足に陥り、子供の発育を害し、あるいは病気にしてしまう。また世間なみの生活をせぬところより、子供が不知不識《しらずしらず》卑屈になるなどのこともあるであろう
前へ 次へ
全330ページ中74ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 愛蔵 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング