を立て、修業に就いたら、中途で他業に変ってはならない。せっかく少し手に入りかけた仕事を捨てて他に移れば、そこでまた一年生から始めねばならず、最初からその仕事をしている者には幾分か遅れて、その差は一生取返しがつかない。稀には天分他に勝れて、何をしても人の上に出るものもあるが、そういう人はまた世間みな馬鹿に見えて、自分ならば往く所可ならざるはなしと自惚れ、あれもこれもやって見て、ついに一生何事にも徹底せず、中途半端で終ることが多い。俗に器用貧乏というて貧乏がつきものなのも、この才人は才に任せて、あれこれ移り、一つに集中することが出来ぬからであります。たとえ天性鈍で、はかばかしい出世は望まれなくても、一事に従うて逆わず、その仕事に一生涯を打込むならば、独自の境地に自然と達するものである。とにかく途中であせって商売がえをするほど愚にしてかつこれくらい大なる不経済はありません。
朋輩より一歩先んずること
一歩を先んずるというところに諸君の疑問がありはしないか。何も一歩と限らず五歩も十歩も、先んずればよさそうに思われるであろうが、実にこの一歩という点がきわめて大切なのである。人の能力は人の身
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