きいることなれば、食物だけは特別御馳走はしなくとも、家族一統平等に腹一杯与えてもらいたきものである。否当然そうあるべきもので、これをせぬ主人は非道不法の者と称すべきである。
店員の容貌と商売の繁栄
世には男子の顧客をひきつけるために、美人を店先に据えておき飾り物とする人がある。一時は何屋の何子とか何店の内儀さんだとか、娘だとかいって、大騒ぎされるが、美人必ずしも店の繁栄を来すものとは限らない。かえって漁色家連の間に引張りだことなって、その結果嫉妬のため店の妨害をされることが沢山ある。ある店の娘さんは絶世の美人だという評判で学生間にもて噺され、自分なども女ながら好奇心に駆られて、わざわざ糀町の寄宿舎から本郷台まで見物に出かけたことがあるが、この店は娘のきりょうを鼻にかけるのでもあるまいが、主人を初め小僧番頭揃いも揃って無愛嬌でつんけんして、客に向って甚だ不親切であったが、果して今日はあとかたもなく潰れてしまった。男女にかかわらず、美女美男だから客をひきつけるのではなくて、つまり福々しい愛嬌のある人が客に応対して成功するものである。要するに人に快感を与えるのであって、世の中に
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