書を楯にしたり、旧慣を墨守して本人の意思を束縛する時は、あたら有為の若者をして将来を誤らしめる事となる。これ従来の小僧制度を改めざるべからず理由の一つである。
また今は、如何なる商売も日に日に同業者の多きを加え来り、これが激甚なる競争となって、ますます生活難の度を高めることになった。ここにおいてか、主人たる者は、年期のあけたところの店員のすべてに小資産を与えて、同種同業の店を出さしむることは、とうてい不可能のことである。仮りに十人あるいは二十人の店員を有する大商店があって、他日すべての店員にことごとく資本を与え、あるいは種々の便宜を与えて同業を開店せしめることが出来たとするも、都下にはまた他にも同業者が多数あって、各々全力を尽して奮闘しつつあるその間に割込み、しかも同種同業を営むのであるから、勢い友を食い、主人の領分を侵してまでも自分の活路を開かねばならぬゆえ、その極激甚なる競争となり、安価となりついには共潰れの惨劇を演ずるようになる。さなきだに資本と信用の乏しき新店は、容易に一家をなし得るものにあらず、かつ卑劣なる主人にありては、長年忠勤をはげみたる番頭の始末に窮して、些細の過失を
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